<< 2025 / 01 >>
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31
[ 56 ] [ 55 ] [ 54 ] [ 53 ] [ 52 ] [ 51 ] [ 50 ] [ 49 ] [ 48 ] [ 47 ] [ 46 ]
Sちゃんは今、「ピーターラビットと学ぶ初めてのピアノ教本2」の
「美しい泉」という曲を練習しています。

この曲は8分の6拍子で
左手3つの8分音符から右手3つの8分音符へ
流れるようにレガート(なめらか)に受け渡し、
美しい水が湧き上がる様子を表現するものです。
メロディーは各小節の左手1つ目の8分音符をつないだものです。

先週のレッスンでは、自信たっぷりに演奏し始めました。

「Sちゃん、右手の最後の音がいつも次の音と混ざってしまってるよ。
 よく聴いてごらん。」

再び演奏するSちゃん。

「ほら。右手の最後の音が次の音までずっと残ってしまってる。
 急がないでいいから、ゆっくり弾いてよく聴いてごらん。」

ところが、その後何回弾いてもSちゃんの演奏は変わらなかったのです。
変わるどころかますます意固地になっていくばかり。

「先生の言っていることはわかりますか?
 わからなかったら、わからないと言ってね。」

「・・・・・」

「わからないのか、それともわかっているけど直せないのか、
 どっちだろうね?」

「・・・・・・」

Sちゃんの目はじっと楽譜を睨んだまま開いていて、
涙が溜まってきました。
(よし、ここからが肝心だ!)
Sちゃんの胸の辺りに手をかざしながら

「いま、あなたのここら辺に黒ーいものがうじゃうじゃと溜まっているよね。」
「フフフ・・・」
 Sちゃんの笑いが少しこぼれました。

「そんな黒いうじゃうじゃ虫がいたら、いい演奏なんて出来ないよねえ。
 気持ちいい演奏なんて出来ないよねえ。ああ、しんどいね。
 さあ、その黒いものを打ち破れー!打ち破れー!」
「フフフフフ(笑)」
 Sちゃんのいつもの笑顔が戻ってきました(^^♪

「ゆっくりでいいから、丁寧に丁寧に、よく聴きながらもう一度弾いてごらん!」

胸の中の黒いうじゃうじゃを打ち破ることが出来たSちゃんは、
今度はゆっくりでまだごつごつはしていましたが、
一音一音濁らない音の流れを聴かせてくれました。

「そうそう、できるやん!ちゃんと聴けてる!聴けてる!
 ちゃんとできるやん。
 さあ、来週はメロディーをもっとはっきりさせて、
 濁らないように弾いてきてね。」
「うん!」

そして、昨日のレッスンがやって来ました。

「わあ、すごい!濁ってない!美しい泉になってる!すごいすごい!」
「だってな、学級閉鎖になったから、ずっと練習してたで。」
「そう、えらい!先週は黒ーいものがいっぱい溜まっていたもんね。」
「そうやで。黒い泉になってた!(笑)」
「でも、今日はとっても澄んだ水の美しい泉になったね。よかったわあ(^^♪」

来週は、テンポを早めてもっと流れる美しい泉に仕上げてくることを課題にして
Sちゃんは元気な笑顔で帰っていきました(^^♪






 



プロフィール
HN:
番匠 浪路
Webサイト:
性別:
女性
Template by kura07, Photo by Abundant Shine